letter

記録

#19

僕は高校生活がとても嫌いだった。

 

元々、第一志望の公立高校に落ちてしまい、滑り止めで通うことになった隣県の私立高校だということもあり、入学の段階でマイナスな気持ちからのスタートだった。

 

制服は学ランが良かったのに、生徒の誰一人としてサイズの合っていないクソデカダサブレザーを着せられるのがたまらなく嫌だった。

 

高校生らしい少し遊ばせた髪型にしたかったのに、頭髪検査とかいう前時代文化にもほどがある馬鹿みたいな校則のせいで、一切の喜びもないほぼスポーツ刈りのような髪型にしなければならなかったことも、たまらなく嫌だった。

 

三年間同じだった担任の男教師は数年前に死んだらしいが、社会人になってから出会ったどんな上司よりも群を抜いてパワハラ気質で、毎日そいつの授業の前は緊張でバレないように震えてた。

 

高校生活で出会った友人は、数少ない今でも連絡の取り合える仲間なので、その点では恵まれたのだが、高校生活トータルで考えるとどう考えてもマイナスだった。

 

どでかいマンモス校だったので、自分のクラスの教室は8階だか9階にあったのだが、窓からは近くを走る高速道路の様子がよく見えたのを覚えている。

 

全く自分を好きになれない状態のまま、これから始まる嫌で仕方のない担任の授業の開始を待っている時、高速道路を見ながら現実逃避のような想像をよくしていた。

 

今、なりたい自分への自己実現を叶えることもできず、絶望感の漂う教室に無力に閉じ込められたまま動くことのできない自分と、高速道路を走って、どこか遠くの場所へと自由に旅をしていく車。

 

ああ、自分もあの車に乗って、今すぐこの教室を飛び出し、どこか遠くの場所へ行きたい。

 

自分と車の対比にまた絶望感を深めながら、ぼーっと窓の外を眺めてたあの瞬間のことを思うと、今の自分は、まだよくここまで頑張った方だな、と思う。