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記録

#18

小学生の頃、歳の少し離れた兄貴がいる僕は、何となくまだ他の同級生がそこまで興味のないもの、知らないであろうものに触れることにカッコよさを見出していて、その時もそんな気持ちから、当時公開されたばかりのデスノートの実写版映画を観に一人で映画館へ行った。

 

映画の終わりに、主題歌であるレッドホットチリペッパーズのダニーカリフォルニアという曲を聴き、僕は初めて洋楽に触れた。

 

その時直感的に、日本で流行ってる皆が知ってる音楽を聴くより、こっちを聴く方がきっとカッコいいんだろうな、と思った。

 

それ以来レッチリにどっぷりハマったとか、邦楽は一切聴かず洋楽漬けになったとか、そういうことは全くない。

 

レッチリは何曲か聴いたけど正直よく分からなかったから、結局ダニーカリフォルニア以外にはもう一曲デスノートの主題歌になったスノウしか知らないし、邦楽にも好きな曲は沢山あったので、全然普通に聴き続けていた。

 

ただ何となく、きっと洋楽を好きな方がカッコいいんだろう、と思い続けていた。

 

それから何年かが経過し、僕は中学三年生の夏を迎えていた。

 

同じクラスの友達が、サム41とスリップノットというアメリカのバンドを教えてくれた。

 

エルレガーデンラッドウィンプスといった日本のバンドは、そこそこ好きだった。

 

ただ、サム41とスリップノットを聴いた時、絶対にこっちだと思った。

 

これを聴き続けようと思った。

 

教えてくれた友達とは、それからよく音楽の話をするようになった。

 

そいつはいつもセンスが良くて、カッコいい音楽を教えてくれて、僕も自分なりに、これならあいつもカッコいいと思ってくれるだろうと感じた音楽を、おススメし返したりするなどしていた。

 

それは僕にとって楽しい時間だったが、月日が経ったり、年齢を重ねたりしていくにつれ、次第にそのような時間も少なくなり、僕はいつしかそいつに教えてもらうまでもなく、自分で自分の好きな音楽に、一人で耽っていくようになっていった。

 

今や好きな音楽は数えきれないほどになったけど、今でも初めてはあの時のダニーカリフォルニアであり、トリガーはあの時あいつに教えてもらったサム41とスリップノットであると思っている。

 

あいつはもう、バンドはあまり聴いていないようで、もっぱらヒップホップやラップなどを好んで聴いているらしい。

 

自分で演奏もしないくせに、何故この音がこんなに好きなのか自分でもよく分からないくせに、ギターとドラムとベースの音ばかり今でも新しく聴き続けているのは、今や周りで僕だけになった。

 

誰とも盛り上がったことがないし、誰にもほとんど話したこともない。

 

でも、たくさん支えられてきた。

 

この音楽が好きな人間になれて良かったな、と僕は思っている。